軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
 
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凱旋当日には、大掛かりな昼食会が催された。

南イルジアを共に戦った兵士を労って開かれた昼食会は、元帥や大将といった将官だけでなく中隊長ら尉官クラスの者までもが宮殿に招待された。これは兵士を大切にするワールベーク帝国ならではの扱いで、他国から見れば異例の厚遇らしい。

帝国の勝利と凱旋を祝う祝賀会はまだ数日間続く予定だけど、さすがに今日は昼食会のみとなった。

夕刻になると帝都はまだお祝いムードに賑わっていたが、宮殿内はやや落ち着きを取り戻し始める。アドルフも昼食会の後は急ぎの案件だけ片付けると早めに政務を切り上げ、夜はゆっくりくつろぐことにした。

晩餐も、アドルフはいつもなら訪客と共にしたり将官らと軍議を兼ねてとるが、今日はシーラとふたりきりでとると命じた。

そのことを侍女に伝えられ、シーラは喜ぶと共にあたふたとする。

こんなに早くアドルフとふたりきりになれるとは思わなかった。それにさっき嬉し泣きしてしまったのもあって、なんだか照れくさい。

あんなにアドルフに会いたいと願っていたのに、いざふたりきりになると思うと嬉しさと恋しさと恥ずかしさが入り混じって、どうしていいのか分からない。

シーラは侍女に晩餐用のドレスに着替えさせてもらうと、モジモジとした気分で晩餐室へと向かった。

「お、お待たせいたしました」

晩餐室にはすでにアドルフが席に着いていた。白いクロスの掛かったテーブルには、金彩と花柄の施された磁器の食器が並び、センターピースにも磁器でできた女神像や花が置かれている。大型のクリスタルシャンデリアがふたつも天井から吊り下げられており、正餐室ではないとはいえ、充分に絢爛な様相を呈している。

案内してきた侍従を下がらせると、アドルフはなんと自らの手でシーラの椅子を引いてくれた。そして最低限の給仕係だけ残し、あとは人払いしてしまう。

今まで彼とテーブルを囲むのは明るい朝だけだったせいか、はたまた数ヵ月ぶりに向き合って食事をとるせいか。シャンデリアの柔らかな灯りの下で見るアドルフの顔はいつもより色香を増しているような気がして、胸がドキドキして食事が上手に喉を通らない。

それどころか、話したいことはたくさんあったはずなのに、言葉さえも上手く出てこなくてじれったく思う。

マカロニのポタージュスープをひとくち口に運んでから、シーラは緊張で裏返りそうな声で話しかけた。
 
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