君の笑顔が見たい
俺を視界に捉えると、布団にもぐってしまった。

それを容赦なくはがす。


「……シュン寒い」

語尾が伸びていない、寝起きの咲夜。

「永塚姉が寒がりなだけだ。ほら、起きろ」

咲夜のことを永塚姉と呼んでいる自分に嫌気が差す。

布団をどかすと、俺の視界に映る、咲夜の瞳の横に付いている濡れて乾いたあと。

起きている時は封印している悲しみや苦しみを無意識にしか吐き出せない咲夜。

俺は。

俺は親になると言ってから、咲夜と優莉愛に何もできていない。


「顔洗ってから来いよ」


やっと起き上がった咲夜の顔には、うっすらと隈ができている。

それを見て、自分の無力さを呪い……。


「言われなくてもそうするつもり~」


伸ばした語尾を耳にして傷ついたことには気付かないようにして、リビングへ向かう。

1か月ぶり位に会ったけど……前よりも寝れていないみたいだ。

そろそろ限界、かな?

だからこそ、夢幻に入ってほしいんだよな。

そのために、今のリーダーと同じクラスに転入させた。

あいつらならば、救ってくれるのではないかと。

お前らの父親が、仲間を守るためにつくった居場所ならば。

そんなことを思いながら、足を進めた。


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