メーデー、メーデー、メーデー。
「何の話をしているのでしょうか?」
仕事の話でなければすぐにでも立ち去りたい様子の木南先生は、何の話かも分かっているだろうが、『仕事の話ではない』事を聞き出す為に敢えて早瀬先生に問いただす。
「…蓮のお墓参りに…「それは仕事の話ではありませんね」
早瀬先生が話し出した途端に断ち切ると、木南先生は止めていた足を動かし歩き出した。
「ちょっと待ってください!! 木南先生に不快な思いをさせてしまった事、本当に申し訳ありませんでした」
早瀬先生が木南先生の二の腕を掴んで止める。
「…不快な思い。…そうですね。しましたね。早瀬先生は、私が何に不快を感じたと思って謝っているのでしょうか?」
不快にさせられた事を謝罪される事にも不快感を滲ませる木南先生。
「私が蓮のお墓に桃井さんを連れて行ったから…」
「早瀬先生が桃井さんを蓮のお墓に連れて行った事に、何故私が不快になったと思いますか?」
「……」
誰が聞いても簡単に答えられそうな木南先生の質問に、早瀬先生は答えを知っていながらも、木南先生の気を悪くしない為の日本語を探しているかの様に口を閉ざした。