メーデー、メーデー、メーデー。

 「身体に負担の少ない科に転科すれば医者を続けられます」

 『脳外科医だけが医者じゃないでしょう?』と木南先生の気持ちの立て直しを図るが、

 「ゆくゆくはね、そうしようと思ってた。年齢が上がって、体力的に苦しくなってきたら、内科に転科しようか。手術からは退いて研究に没頭しようかって。でもね、私はオペがしたくて医者になったの。私の考えていた『ゆくゆく』は今じゃないの」

 脳外科医としての自分にプライドを持っている木南先生には、オレの言葉は響かない。

 木南先生はベッドの近くに置いてあった携帯を手に取ると、『3秒で出て行かないと、本当に警察を呼ぶ』と言って、オレの背中を押し始めた。

 出て行くわけにはいかない。木南先生をこのまま家に帰してはいけない。が、警察を呼ばれるわけにもいかない。木南先生ならやりかねない。

 木南先生に押されるがまま、病室のドア付近まで来てしまった時、
 
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