メーデー、メーデー、メーデー。

 「藤岡さん、興奮すると頭が痛くなっちゃいますよ」

 そう言ってそっとドアを開け、中に入ってきたのは早瀬先生だった。

 早瀬先生の顔を見た途端に、藤岡さんは震える右手の手の甲で鼻を擦り、涙と一緒に流れ出てしまっていた鼻水を拭き取った。

 早瀬先生は男のオレから見てもカッコイイ。

 そんな人に、ちょっとでも自分を良く見せようとする藤岡さんの女心と、『私はこれから恋愛出来るの?』という不安を思うとあまりに苦しくて、喉の奥がきゅうっと締まり、ますます言葉を発せない。

 「さっき、柴田先生にしていた質問、廊下まで聞こえてきていたので、私が答えても良いですか?」

 答えに窮して喋れもしないオレを知ってか知らずか、早瀬先生が藤岡さんの問いへの返事を買って出た。

 「……」

 無言で早瀬先生を見つめる藤岡さん。
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