メーデー、メーデー、メーデー。

 「藤岡さんの命を助けたのは、藤岡さんのご家族と病院スタッフ共に『藤岡さんに生きて欲しい』と願ったからです。そこに藤岡さん自身の意思はない。私たちのエゴで助けました。
 確かに私たちは、藤岡さんに麻痺が残ってしまう事を知っていました。それを藤岡さんのご両親に伝えた時『娘を元の身体に戻して欲しい』とお願いされました。それは難しい旨を説明すると、『それでも助けて欲しい』と言われたので手術をしました。藤岡さんの命は、それほど大切なものなんです。後遺症が残っても、命の価値は下がらない」

 「…『命の価値は下がらない』。…綺麗事。反吐が出る。命の価値なんて確実に下がっているじゃないですか!! 外に出ればみんな私を変な目で見るに決まっている。『あぁはなりたくないね』って嗤われるか、『可哀想な人』って哀れまれるんだよ。そんな現実の中で生きていかなきゃいけないなんてそんなの…」

 早撰先生の言葉に藤岡さんは嫌悪感を示し、また涙を零した。
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