メーデー、メーデー、メーデー。
木南先生に少し遅れて霊安室に着き、ドアを開くと、
「どうしたの? 研修医」
先に来ていた木南先生が、蓮くんの頭を撫でていた手を止めてオレの方を見た。
「蓮くんに手を合わせに来ました。自分は何も関わりがなかったのですが、話は聞いていたので」
「そっか」
木南先生は、ドアの付近で突っ立ていたオレを『おいで』と手招きすると、さっきまで自分がいた場所にオレを立たせた。
穏やかで可愛い寝顔の蓮くんに、手を合わせて目を閉じる。
閉じた瞼の内側から、悔しさが涙となって滲む。
「不甲斐ない」
そう言ったのは、オレではなく木南先生だった。
「仕方がなかった。今の医学では、誰にも蓮くんの病気は治せなかった。でも『仕方がない』という事が情けない」
そっと目を開け隣を見ると、木南先生が唇を噛みながら蓮くんを見つめていた。