メーデー、メーデー、メーデー。
霊安室を出ると、オレを待ち構えていたかの様に、まだ木南先生がいた。
「何してるんですか? CRCの人が来るんじゃないんですか?」
「…イヤ、まぁ。そうなんだけど…」
オレの質問にしどろもどろに答えながら、オレを歩かせまいと両手を広げて阻止する木南先生。不審過ぎる。
「何、この手。」
さっきのお返しとばかりに木南先生の手を指摘し、木南先生を振り切ってエレベーターの方へ歩き出す。
曲がるつもりのない角に何気なく目をやった時、
「…あ」
思わず足を止めた。
そこには、長椅子に腰を掛け、頭を抱えながら項垂れる早瀬先生と、その頭を撫でながらそっと抱き寄せる桃井さんの姿があったから。
「…病院外でやってくれって感じよね」
早瀬先生と桃井さんに呆れながらも、オレが桃井さんに好意を持っている事を知っている木南先生は、オレにこの光景を見せまいと、さっきおかしな行動をしたのだろう。