メーデー、メーデー、メーデー。
「…本当ですよね。つか、変な気を遣わないでくださいよ。これしきの事でショックを受けるほどピュアボーイじゃないですよ」
助けたいと願っていた蓮くんが亡くなって、早瀬先生が落胆する気持ちは分かる。
でも、自分を好きな人の胸を借り、その気持ちを慰めてもらおうとする早瀬先生に腹が立った。
木南先生は誰にも寄りかからずに一人で悲しみに耐えているのに、この人は何をしているのだろうと、今まで早瀬先生の事を尊敬していたのに、軽蔑する気持ちも湧き出る。
「イヤイヤイヤ。動揺しまくりじゃないですか。『これしき』とか言う現代人、久しく見てないわ」
『可愛いねぇ』と木南先生が笑った。
木南先生もオレも、早瀬先生と桃井さんに気付かれない様に小声で話しているつもりだった。
でも、何かの気配を感じたのか、桃井さんの肩越しの早瀬先生の目がふいにこっちを見て、オレと目が合った。