メーデー、メーデー、メーデー。

 木南先生がオレの慰めを必要としていない事など分かっていたから、木南先生のが取るだろう反応も想定内。

 弱音を吐いてくれたら慰めるのに。という気持ちも確かにあるのに、強気ないつも通りの木南先生に安堵している自分もいた。

 「可愛げないですね、木南先生は」

 だから、安心して軽口をたたく。

 「この歳で可愛いもクソもないわ。CRC、5分以上待たせてるからもう行くわ」

 仕事人間の木南先生は、自分を可愛く見せたい欲はないらしいが、それでも去り際に『お気遣いどうも』と少し照れながら言うと、エレベーターの方へ早足で向かって行った。

 「何だかんだ、可愛いところもあるし」

 木南先生の後姿を見ながら少し笑ってしまった。

 医局に戻るべく、早瀬先生にペコっと頭を下げ、オレもエレベーターへ向かう事に。

 早瀬先生への当て付けは成功したらしく、早瀬先生は桃井さん越しに眉間に皺を寄せながらオレを見ていた。

 桃井さんに甘えながらそんな表情をする事が、桃井さんにどれだけ失礼な事なのかが分かっていない早瀬先生を、馬鹿なんじゃないかと疑う。
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