メーデー、メーデー、メーデー。

 自販機コーナーで缶コーヒーを2本買い、2人で中庭のベンチに腰を掛けた。

 『どっちが良いですか?』と微糖とブラックのコーヒーを桃井さんに差し出すと『こっちで』と桃井さんが微糖を指差した。

 微糖の方の缶のプルタブを開け、桃井さんに手渡すと、『ありがとう』と受け取った桃井さんがコーヒーを一口含み、

 「この前、早瀬先生の息子さんの命日に、早瀬先生にお願いして、私もお墓参りに連れて行ってもらったんです。私、分かり易いからもう気付いてると思うんだけど、早瀬先生の事が好きなんです。だから、好きな人の息子さんに挨拶がしたいと思ったんです」

 飲み込んだ途端に話し出した。

 分かってはいたけれど、桃井さんの口からはっきり『早瀬先生が好き』と言われると、流石に胸がチクチクする。

 「うん」

 相槌を打ちながら、胸の痛みを誤魔化す様に、オレもコーヒーに口を付けた。
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