メーデー、メーデー、メーデー。
桃井さんは木南先生にご立腹の様だが、オレは木南先生の人間らしい一面が聞けて、『やっぱ完璧な人間なんていないよな』と少しホっとした。というか、正直そんな事はオレにとってはどうでも良い。オレが気になるのは…、
「…桃井さんは早瀬先生と付き合っているんですか?」
早瀬先生が桃井さんの彼氏になったのかどうかだ。
「そうなればいいんですけどね。今頑張っている最中です。応援してください!!」
桃井さんが残念そう眉を八の字に下げた。
恋する乙女の笑顔とはどうしてこんなにも可愛いのだろう。だけど、
「…そっか。オレ、そろそろ仕事に戻りますね。帰り際に引き留めてしまってすみませんでした」
桃井さんの恋の応援要望には返事をせずにベンチから立ち上がった。桃井さんの恋、成就しなければいいのにと思うから。
「全然。柴田先生に話したらスッキリしました。ありがとうございました。ひたすら愚痴を聞かせてしまってすみませんでした」
桃井さんも腰を上げ、『コーヒーごちそうさまでした』とお礼を言うと、『また明日』と手を振ってオレから離れて行った。
オレは本当に単純な人間なので、『ありがとう』とか『ごめんなさい』とか『ごちそうさま』をちゃんと言える桃井さんの事が、やっぱり好きなわけで、
「応援なんか、絶対にしなーい」
と呟いて、病院内に戻った。