メーデー、メーデー、メーデー。
医局に戻る途中、
「あ、いた!! 研修医!! アンタ、研修レポート提出してないでしょ。事務局から電話きてたよ」
話題の木南先生に遭遇した。今日も普段と変わりない様子の木南先生が、相変わらずオレを『研修医』と呼びながら話し掛けてきた。
「柴田です。あー、デスクの引き出しに入れたままだったかもしれないです」
これを『充実』と呼ぶのだろうが、事務局にレポートを持って行く事をすっかり忘れるくらいに、ここ最近は仕事に恋にと割と忙しく過ごしていた。
「あ、なんだ。ちゃんと書いてあるんだね。良かったー。だったらさっさと事務局に出してきてよ。研修医がレポート書き忘れてて、オーベンの私が上からチクチク言われた日にはどうしてくれようかと思ってたわよ」
木南先生も医局に向かう途中だったらしく、オレの隣を歩きながらオレの横腹を軽くど突いた。
「柴田です。どうしてくれようと思っていたんですか?」
「まぁ、研修後に研修医の希望医局に入れない様に裏から手を回すくらいはしようと思ってたわ」
『クククッ』と笑う木南先生の冗談は、他の人の何倍も毒気が強いが、いつもの事なので桃井さんが木南先生に感じているだろう不快感はない。