メーデー、メーデー、メーデー。

 「柴田です。木南先生には絶対に希望医局は教えません」
 
 だから普通に言い返す。

 「じゃあ私は研修医に何も教えません」

 「はぁ?! オーベンでしょうが!!」

 木南先生にど突き返すと、木南先生が『イヒヒヒ』と無邪気に笑った。

 オーベンと研修医の関係で、こんな風に気軽に接する事が出来るのは、とても珍しいと思う。ローテで色々な科を回ってきたが、こんな風に気を遣わずに話せたオーベンは木南先生しかいない。

 桃井さんが思っているほど、木南先生は悪い人ではないんだけどなぁと思いながら、木南先生と歩いていると、

 「木南先生、ちょっとよろしいでしょうか?」

 前方から早瀬先生が近付いてきた。

 さっきまでの笑顔を一瞬にして曇らせる木南先生。

 「何でしょう?」

 木南先生が立ち止まるから、何となくオレも足を止めた。
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