メーデー、メーデー、メーデー。
早瀬先生はオレをチラリと見ると、
「場所を変えましょう」
オレの存在が邪魔だったらしく、木南先生と2人で話せる場所に移動を提案した。
「それは、ここでは話せない患者さんの個人情報が関わる話ですか? それとも研修医の耳には入れたくない個人的な話ですか?」
木南先生は、後者である事を察しているだろうに、『仕事以外の話は受付けません』とばかりに早瀬先生にわざとらしい質問を返した。
「…この前は、すみませんでした」
『後者です』と言ってしまえば木南先生が話を聞いてくれないと分かっている早瀬先生は、観念したかの様に本題を切り出した。
『先に医局に戻ります』と言って席を外せば良いのに、木南先生と早瀬先生の話が気になってこの場を動こうとしないオレは、かなりゲスだと思う。