アーモンド~キミとの物語~
「行ったか…」
秋斗は扉のほうを確認しながら呟く
図書委員の生徒が「行ったぞ」とジェスチャーを送る
その合図を見て安心して千咲の口元から手を離す
(せ、先輩がすごく近く…。それになんか甘い匂いが。この匂いチョコレート…?)
秋斗に抱きしめられている千咲はふわっと甘い香りがするのに気付く
香水でもない香りにチョコレートっぽい匂いがしたためそうじゃないかと思ったのだ
それも束の間で秋斗が千咲を後ろから抱きしめていることにやっと気付きパッと離れる
「あ…と、なんかごめん。オレ…」
「い、いえ…。あの、私こそ本取ってくれてありがとうございます」
「いや、どういたしまして」
今のさっきでお互い顔を赤くして気まずい空気になる
(どうしよ…。なんか気まずい…)
そんな空気を打ち破るように口にしたのは秋斗だった
「……そういや、ほのかと同じバイト先にいるって聞いたけど、確か千咲ちゃんだったよね」
「あ、はい。あのどうして私の名前…」
「あー…」
「実は、」と言ってポリポリと後ろを掻きながら話す
「ほのかと…うさからちょっとだけキミの話聞いててね。気になっててさ…」