アーモンド~キミとの物語~

"好き"とハッキリ言わなくても秋斗の気持ちが伝わってくる気がした
千咲をそっと抱きしめる

「秋斗先輩…」

「うん」

「わ、私…ずっと待ってる」

「うん」

千咲も秋斗を抱きしめ返す
ギュッと強く

いつかまた会えると信じて

「……さ、帰ろっか。暗くなったし送ってくよ」

「うん、ありがとう」

手を差し伸べる
その手をそっと掴み二人は手を握る

そしてしばらく無言のまま千咲の家へと向かう
近くまで来ると人影がありパッと手を離す
その人影は創汰だった

「創汰?」

「うさ…」

創汰は二人の様子を見て想いが通じたんだなと察した

「コンビニに行く途中だったから」

ちょっと言い訳苦しかったが二人は「そっか」
となにも聞かなかった
ここからは創汰が千咲を送ることにした

「じゃあ帰るか」

「うん。……先輩またね」

別れるのが名残り惜しい千咲
秋斗も同じ気持ちだ

ほんとはもう一度だけ抱きしめたかったがその気持ちを抑えて「またね」と返す
そして創汰に近寄り肩にそっと手を置いてそっと耳打ちする

「……うさ、千咲ちゃんを頼むわ。何があっても」

「……え」

そう言って「じゃあね」と言い残して帰っていく

これが二人が秋斗を見た最後だった

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