ただいま冷徹上司を調・教・中!
なんなんだ、この成長ぶりは。

突然こんな大人の男性になられたって困るんだけど。

私に会いたかったって……。

もしかして平嶋課長も私と同じように思ってくれていたりする……?

そう思うと、私はもう平嶋課長に抱きつきたくなってしまった。

……が。

「色々考えてこの答えにたどり着いたんだが……。正解か?」

止められない感情にあぐねいている私とは違い、平嶋課長は正解か不正解かを考えている。

あまりにも違う私と平嶋課長の温度差に、さっきまでの熱は一気に引いていった。

「そのセリフがなければ正解でしたね」

無表情に私がそう言うと、平嶋課長は慌てて「違うぞっ」と手を振った。

「何が違うんですか。平嶋課長は頭で考えて、今後本当に恋人になる女性が喜ぶであろう答えを導き出して、私に回答を求めた訳でしょ?」

何を言っているんだ、私は。

そんなこと当然のことなのに。

そのために私達は恋人同士を演じているというのに。

いざ本当にそう接されると腹が立ってたまらないなんて。

馬鹿げている。

「それで正解です。どんなタイプの女性も、こんなふうに思ってもらえば喜びますよ」

冷たく言い放ったことを取り繕うかのように、笑顔を張りつけ優しく言葉を発した。

「だから違うんだよ」

平嶋課長は困ったように眉を下げ、人差し指で頬をポリポリとかいた。

「いろいろ考えて答えを探してたら、やっぱり久瀬の顔が見たくなったんだ。迷惑かなとは思ったけど、本当の恋人のように接しろって言われたし、思ったまま行動しても問題ないかなと思った結果なんだが」

回りくどい言い方だけど。

つまりは本当に私に会いたくなって来てくれた。

そういうことでいいの?

冷めてしまっていた心が、再び熱を帯びる。

「だったらなおさら。大正解です」

私が微笑むと、平嶋課長も安心したように笑ってくれた。
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