ただいま冷徹上司を調・教・中!
この時初めて私は和宏を怖いと思った。
「どうして俺の言葉を無視するの?」
無視なんかしていない。
私は自分の裏切りを棚に上げて、自分勝手に復縁を望む和宏に、しっかりと自分の気持ちを伝えてきたはずだ。
『裏切った人間とは復縁はできない』と。
「どうして俺の気持ちをわかってくれないんだよ」
どうして裏切られた人間の気持ちをわかってくれないのよ。
「めちゃくちゃ傷付いたんだぞ?」
自分の彼が自分の親友だと思っていた女とヤってる声を聞いた私の方が、数倍数十倍傷付いてる。
「千尋、もう一度やり直そう?」
問うように小首を傾げてそう言う和宏を、どうしたって受け入れることなんでできない。
「何度も言ってるよね?私達はもう終わってるの」
「それは千尋が一方的にそう決めただけだろ?」
「あんなことしておいて今さら何言ってるのよ」
「だからそれは謝ってるだろ?」
「謝ればなんでも許してもらえると思わないでっ」
あまりにも勝手な言い分に、カッとなった私は思いっきり和宏を睨みつけた。
付き合っていた時は、ただなんとなくいつものように相手に尽くし、相手の都合のいいように振舞ってきた。
そんな私がこんな態度で拒絶するなんて、きっと和宏は驚いているに違いない。
案の定、和宏は目を見開いて私を見つめている。
もう一括して出ていこうか。
……いや、下手して怒りでもされたら大変なことになる。
これくらいで上手く交わしていかなければ。
そう思った矢先、私は和宏の手によってテーブルの上に一瞬で押し倒されてしまった。