ただいま冷徹上司を調・教・中!
18時を過ぎて紗月さんが帰ると、営業マンが次々と帰社してくる。

平嶋課長はそのたびに驚かれ、私と平嶋課長を見比べられてニヤニヤと笑われる。

その居心地の悪さったらない。

どうやら私が休んだたった一日の間に、私と凱莉さんは完全に公認の中になってしまったようだ。

私としては嬉しい限りなのだけれど、凱莉さんは……平嶋課長としてはそれでいいのか疑問だ。

平嶋課長から早く帰るようにと言われたことだし、明日の準備を終わらせそろそろ帰ろうかと思ったとき。

「帰れるか?」

私の頭上から平嶋課長の声が聞こえた。

驚いて振り返ると、既に帰る準備万端の平嶋課長が、私を今か今かと待っていた。

「あ……。もう終わります」

戸惑いがちにそう言うと、「給湯室で待ってる」と平嶋課長は一言呟いてフロアを出て行った。

「給湯室が待ち合わせ場所って。社内恋愛、羨ましいです」

瑠衣ちゃんの言葉に営業マンたちも頷くものだから、もう開き直るしかないような気がしてきた。

次々に冷やかしにかかる皆を上手く交わして、私は平嶋課長の待つ給湯室へと急いだ。

「お待たせしました」

給湯室の壁からひょっこりと顔を出すと、平嶋課長は振り向いてまばゆい微笑みを見せてくれた。

そしてそのまま私の手を取り、給湯室の一番奥まで引き入れた。
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