ただいま冷徹上司を調・教・中!
奥にあったゴミ箱がガタガタと音を立てる。

平嶋課長は壁と自分の間に私を挟んで、私をきつく抱きしめた。

「ちょ……平嶋課長?どうしたんですか?」

あまりの驚きに心臓を跳ね上がらせながら、私は平嶋課長のスーツの背を引っ張った。

「千尋……」

平嶋課長は少しだけ身体を離し、両手でそっと私の頬を包み込む。

そのままコツンとオデコをくっつけて、「よかった」と呟きオデコを離す。

「ずっと気になってたんだ。また体調崩してるんじゃないかと思って」

私を見つめながら何度も頬を撫でる平嶋課長は、すでに凱莉さんになっていて、ここが会社だということを忘れてしまいそうだ。

「そんな簡単に体壊しませんよ。意外に心配性なんですね」

クスリと笑ってそう言うと、凱莉さんは少し照れたように苦笑いをする。

なんて可愛らしい顔ができるようになったんだろう。

もう、身悶えしそうになるほど好きが溢れる。

「千尋は仕事に対しては無理するからな。それに昨日は無理させたし……」

凱莉さんの言っている無理させた理由が何なのかを思い出し、私は顔が真っ赤になるのを感じた。

「千尋……早く帰ろう」

耳元でそう囁かれた言葉が妙に甘さを含んでいるような気がして、それに反応するように体の芯が疼くのを感じてしまった。
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