ただいま冷徹上司を調・教・中!
晩御飯も食べずに求め合ったけれど、少しもお腹はすいていない。

明日の仕事のことも考えて、まともに動けるようになった0時前には凱莉さんに車で送ってもらった。

名残惜しくて車内で何度となくキスを交わす。

まるで芸能人のゴシップのようだと笑い合った。

それからというもの、約束で決めた土曜日以外の平日も、凱莉さんと過ごすことが多くなっていった。

それは私に、本物と偽物の線引きを忘れさせてしまうものだった。

凱莉さんは私に何も言わないけれど、とにかく甘くて仕方がない。

仕事も以前よりも数段早く切り上げる癖に、数倍捌けているように見える。

「時間の無駄遣いをしたくないんだ。千尋との時間を作るようになって、今まで自分がどれだけ無駄なことをしていたのかに気付いたよ。千尋のおかげだな」

そう言われると、今までの彼女とは違う自分の待遇に、ついつい頬が緩んでしまう。

時間を作るのも、平日マメにデートを重ねるのも、こんなに求めたくなるのも、全部私が初めてだと凱莉さんは言う。

凱莉さんの初めてをたくさんもらって、私はすっかり仮であることも忘れて一緒にいる時間を思い切り楽しんだ。

けれど。

その時間が続けば続くほど、私には二つの疑問が湧いてきた。

考えれば考えるほど膨れていく良くない考えに、このままではいけないと思い、ひとつずつ思いをぶつけることにした。
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