ただいま冷徹上司を調・教・中!
平日のデート、凱莉さんの部屋でのことだ。

私はひとつの疑問を解決すべく、覚悟を決めて座っていた。

「やっぱり何か買ってきた方がよかったんじゃないのか?」

いつもなら外で一緒に晩御飯を食べてから互いの家に向かう。

もしくはちゃんとテイクアウトをするのだが。

今日の私はそれを頑として断った。

「デリバリーでも頼むか?」

何かあったかな、とチラシでも探しているのか、凱莉さんが戸棚をガサガサと詮索し始める。

「いつも外じゃ味気ないじゃないですか。それより何か作りますよ。こう見えて私、料理得意なんです」

凱莉さんの背中に向かってそう投げかけると、彼はピタリと動きを止めた。

「凱莉さん?」

「仕事で疲れただろう?また機会があった時に……」

「仕事終わってこの時間からご飯作るなんて普通でしょ?」

19時を指し示す時計は、まだ十分に時間があると教えてくれている。

「いや、デリバリー頼んだ方が早いじゃないか」

「忘れたんですか?最初のデートて食器選んだじゃないですか。あれ、まだ一度も使ってないんですけど」

「コーヒーカップは何度も……」

「私がキッチンに立つとまずい理由でもあるゆですか?」

ずっと疑問に思っていたことの一つ。

凱莉さんは絶対に自宅で晩御飯を作らせてくれない。

それは私の家でも同じことで、必ず外食かテイクアウトかデリバリーを好む。

それが何故なのか。

私はずっと偈せなかったのだ。
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