ただいま冷徹上司を調・教・中!
どうしてなのか、自分一人で考えるとロクなことにならない。

本当の凱莉さんを知るまで、きっと数いる女性たちは懸命に凱莉さんに尽くしたはずなのだ。

その歴代彼女と何かがあったのだろうか。

一度モヤモヤしてしまうと、徹底して追求したくなってしまう。

今まではいろんなことに妥協をしていたせいか、何も感じなかったというのに。

本気になると面倒くさい女になってしまうなんて、私はなんて重たい女なんだろうか。

そうは思っても、凱莉さんのことは何でも気になってしまう。

重い女だと引かれても、私は凱莉さんの全てが知りたいんだ。

「はぐらかさないでちゃんと答えてください。何かマズいことがあるんですか?」

思い入れのある女でもいるのだろうか。

本気で好きになった女性がいて、女がキッチンに立つと、その人のことを思い出して心が痛む……とか。

もしそうであるならば、私ほどうしたらいいのだろう。

凱莉さんに忘れられない人がいるなら、大人しく身を引いた方がいいのだろうか。

自分で聞いたくせに耳を塞ぎたくなってしまって、もういいです、と言いかけたとき。

「今まで千尋には何でも話してきたもんな。このことも、ちゃんと話すよ。別に隠していたわけじゃないんだ……」

凱莉さんはそう言うと、テーブルを挟み私と向き合う形で座ると溜め息をつく。

その真剣な表情に、私は嫌な予感を隠しきれなかった。
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