ただいま冷徹上司を調・教・中!
私がスマホを片手に席を立つと、スマホが震え、『わかった。そんなに俺に会いたいの?』と表示された。

……なんなんだコイツは。

思わず舌打ちしたくなるのを我慢して、既読にもせずバカなメッセージを瞬時に消した。

やっぱりメッセージで別れりゃよかった。

そう後悔しながら休憩室に入ると、私の後を追うように和宏が飛び込んできた。

「どうしたの?千尋が会社でこんなことするなんて初めてじゃない?」

ニコニコ笑う和宏の顔はいつもと何も変わらず、冷たい感じも悪びれた感じもしない。

それがまた私の怒りに火を灯す。

「ごめんね。でも安心して。これが最初で最後だから」

無表情で私がそう言うと、和宏は困惑した表情を浮かべた。

「千尋?なにかあった?」

白々しく私の肩に伸ばした手をかわし、私は大きく一度深呼吸をした。

どんなに相手が悪かろうと、どんなに相手がクズ男だろうと、やはり自分から別れを切り出すのは気分の良いものではない。

けれど今、この男を目の前にして思った。

二年半の恋愛が生み出したものは、愛情でも情でもなんでもなく、ただたんに不快な嫌悪感だけだったのだと。
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