ただいま冷徹上司を調・教・中!
「最近何だかエロいんだけど」
出勤時、突然後ろから声を掛けられ振り向くと。
「うえ」
瞬時に顔を歪ませてしまった。
「爽やかな朝に不似合いな顔、やめてくれる?」
「だったら声掛けるのもやめてくれる?」
そう言っている私の言葉が聞こえないのか、声の主、梨央は堂々と私の隣に並んで歩く。
最近、私の中で大きな変化が起きていた。
梨央とこうやって並んで歩くことが、少し前まではあたりまえだったなぁ、とか。
梨央の顔を見ていても、以前のような嫌悪感を抱かなくなったなぁ、とか。
少しずつ。
本当に少しずつなのだけれど、梨央に対する気持ちが和らいでいる気がするのだ。
「最近、千尋の腰つきエロい」
「ふざけてんじゃないわよ。何言ってんの」
「本当のことよ。滑らかになったっていうか、なまめかしくなったわ」
「どこ見てんのよ」
チラリと一見すると、梨央は裏のない笑顔で私を見ている。
「私はいつでも千尋を見てるわ。前にも言ったでしょ?私は千尋のことが大好きなんだって」
なんの悪びれもなく言う梨央に、腹を立てるというよりも呆れが出てきた。
「そんなこと言ってるけど、平嶋課長と私に何したか、忘れたわけじゃないでしょうね?」
あれだけ嘘を並べて私達のデートを潰し、全力で凱莉さんを誘惑したくせに。
恨めしそうに睨みつけると、梨央は明るく声をあげて笑い出した。
「平嶋課長ったら、そんなことまで千尋に話してるの?信じられない」
こっちの方が信じられない、と心で思った。
「でも心配しないで。私、もう平嶋課長に手は出さないから」
信じられない梨央の言葉に、私の方が毒牙を抜かれてしまった。