ただいま冷徹上司を調・教・中!
だからといって、それを理解できるかと言われると、もちろん出来はしない。

どんな理由があるにせよ、人を弄び、人を傷付けていいことにはならないのだから。

「なんだかんだと自分に都合のいいように言葉を並べても、私は梨央のことを信用しない。……でもあのことがなければ今がないのは確かよ。そう考えると、悪いことばかりじゃなかった、って事だけは言っとくわ」

私は早足で梨央から離れて会社へと急いだ。

きっと私は梨央からされた仕打ちを忘れることはないと思う。

けれど薄れることはあるかもしれない。

そう思えるのは、凱莉さんの徹底した私への……。

……なんなんだろう?

素直に『愛情』と言えない関係。

『愛情』『契約』『忠誠』『同情』

凱莉さんは一体今の関係をどう思っているんだろう。

当たり前のように一緒にいて、当たり前のように身体を重ねて。

これ以上ないくらい愛されているって感じられるのに。

私達はまだ『仮』のまま。

私が感じている愛情も、擬似かもしれない。

そう思うと、二人の気持ちに決定的な違いがあるような気がする。

だからだろうか。

もう一つの拭えない疑問に胸が騒ぐのは。

それが凱莉さんなりのウソとホントの線引きのような気がして。

私はまた不安になるのだ。
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