ただいま冷徹上司を調・教・中!
「昨日……来た……の?」

面白いほどの顔色の変化に、こっちの方が驚いてしまうほどだ。

「そう、行ったの。ドタキャンだったし、和宏に会いたい、なんて健気なことを思いながらね。鍵をかける余裕もないほどだったのねぇ。お楽しみの最中みたいだったから、そのまま帰ったけど。だからこれは当然の結末なの。理解できた?」

小首をかしげて和宏の様子を確認すると、この数十秒で観察日記が書けそうなほどの変化を見せている。

「……いや……違うんだ。あれは……その……」

「一分経過」

私は彼の言葉をスッパリと断絶した。

「いや待ってよ!ちゃんと話を……」

「何を話しても私の結論は変わらないわ。これで別れないなんて選択肢はない。言い訳するだけ無駄。聞きたくない。意味もない。終わりよ」

私は和宏の言い訳も聞かずに休憩室を後にした。

一応背後を気にしたが、彼が追ってくる気配は感じられない。

話を一分と区切ったのは正解だった。

あのまま和宏の言い訳を聞いていたら、きっと梨央を悪者にして延々と自分の浮気を正当化するに決まっている。

何を話しても浮気の事実は消えないし、そんなものに付き合うつもりもない。

なにをどうしても、許せないものは許せないんだから。
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