ただいま冷徹上司を調・教・中!
凱莉さんはどうしていつもこうなんだろう。

私が想像もできないことを、いつもサラリと口にする。

胸が……幸せで苦しいなんて。

こんな苦しさもあることを、私は生まれて初めて知った。

「今回の出張で俺は改めて、千尋じゃなければ駄目なんだってことを思い知った。千尋が足りなくて禁断症状が出そうだったよ。会社では抑えないといけないとわかっていても、気を抜けば所構わず千尋を抱きしめてしまいそうで耐えられなかった」

「もしかして、私の手を避けたのって、それが理由ですか?」

「必死で抑えてるっていうのに、千尋が無防備に触れるんだもんな。平静を装うのが大変だったよ」

……それが理由だったのか。

私は緊張の糸がぷっつりと切れてしまって、ぽてっと凱莉さんの肩に頭を乗せた。

「お前、人の話聞いてたか?触れると暴走するって言ってるんだぞ?」

焦って私の頭を押し返そうとする凱莉さんの手を払って、ぎゅっと力いっぱい抱きついてやった。

「ここは会社じゃないでしょう?暴走して何が悪いんですか。言っときますけど、禁断症状が出そうになってたのは凱莉さんだけじゃないんですからね」

私だって、たった4日間なのに凱莉さんに会いたくて、触れたくて、抱きしめてほしくて、温もりが欲しくて。

恋しくてたまらなかったんだから。

私がそう言うと、凱莉さんは一度強引に私を引き離し、抱え上げるようにきつく抱きしめてくれた。

「凱莉さ……」

大好きな名前も最後まで呼ばせないほどの勢いで、凱莉さんは自らの唇で私を塞いだ。

貪られるって、こんなキスのことを言うんじゃないだろうか。

全神経を搾り取られるかのような、身体全部が性感帯に変わるような淫靡なキスだった。
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