ただいま冷徹上司を調・教・中!
「凱莉さん、先に出てくださいよ」
「堂々と出ればいいだろう?」
「嫌ですよっ。凱莉さんの背に隠れて出ます」
「わかった。じゃあ着いてこい」
「ちゃんと隠してくださいね」
凱莉さんの背中にできるだけくっついて、私はすごすごと出口に急ぐ。
大きくドアが開くと、一斉にこちらに視線が向くのを感じた。
歩を進める凱莉さんの背中でなんとか逃れようと必死になる。
しかし……。
「平嶋課長」
前方から女性の声が聞こえた。
これは紛れもなく……梨央だ。
「わざとなのか天然なのか知りませんけど」
フロアのど真ん中で声をかけてくるなんて、なんてヤツだ……。
恨めしそうにそっと顔を出すと梨央と視線がぶつかった。
梨央は私の顔を見るなりニッコリと……いや、ニヤリと。
とてつもなく意地の悪い笑顔を私に向けた。
そして凱莉さんを向き直り、少し声を高めに一言言い放った。
「口紅、ついてますよ?」
と。
「ひゃっ」
私の短い悲鳴は、フロア全体の悲鳴に掻き消された……。
凱莉さんは特に慌てた様子もなく、親指でグイッと唇を脱ぐって。
私を振り向き、これまたニヤリと微笑んだ……。
「…………やったわね……」
私の呟きも聞こえないほどザワつくフロアで、私一人が青くなる。
やられた……。
これ、絶対やられたでしょ……。
凱莉さんの、あの笑顔を見れば一目瞭然。
天然でもなんでもない。
「策士だ……」
絶対計算に決まってる。
私の恥をもって、私と凱莉さんは晴れてめでたく(?)全社員公認となったのでありました……。
「堂々と出ればいいだろう?」
「嫌ですよっ。凱莉さんの背に隠れて出ます」
「わかった。じゃあ着いてこい」
「ちゃんと隠してくださいね」
凱莉さんの背中にできるだけくっついて、私はすごすごと出口に急ぐ。
大きくドアが開くと、一斉にこちらに視線が向くのを感じた。
歩を進める凱莉さんの背中でなんとか逃れようと必死になる。
しかし……。
「平嶋課長」
前方から女性の声が聞こえた。
これは紛れもなく……梨央だ。
「わざとなのか天然なのか知りませんけど」
フロアのど真ん中で声をかけてくるなんて、なんてヤツだ……。
恨めしそうにそっと顔を出すと梨央と視線がぶつかった。
梨央は私の顔を見るなりニッコリと……いや、ニヤリと。
とてつもなく意地の悪い笑顔を私に向けた。
そして凱莉さんを向き直り、少し声を高めに一言言い放った。
「口紅、ついてますよ?」
と。
「ひゃっ」
私の短い悲鳴は、フロア全体の悲鳴に掻き消された……。
凱莉さんは特に慌てた様子もなく、親指でグイッと唇を脱ぐって。
私を振り向き、これまたニヤリと微笑んだ……。
「…………やったわね……」
私の呟きも聞こえないほどザワつくフロアで、私一人が青くなる。
やられた……。
これ、絶対やられたでしょ……。
凱莉さんの、あの笑顔を見れば一目瞭然。
天然でもなんでもない。
「策士だ……」
絶対計算に決まってる。
私の恥をもって、私と凱莉さんは晴れてめでたく(?)全社員公認となったのでありました……。