ただいま冷徹上司を調・教・中!
そのままエレベーターホールの横にある給湯室に入ると、カバンを置きマグカップを洗った。

ペーパーで丁寧に拭き上げ、課によって仕切られた食器棚にカップをしまう。

さて、気分もいいし、今日はチューハイと生ハムでも買って帰るか。

鼻歌でも出そうなほど機嫌よくカバンを手にして給湯室を出て行こうと振り向くと。

私が振り返るのを待っていたかのように、そこに立っていた人物と目が合った。

この瞬間、今日一日の私の努力は、全て水の泡になってしまったようだ。

全身に溜まっていた空気を全て吐き出したのではないか、というほどの大きな溜め息が私の口から漏れる。

せっかく終わったと思っていたのに、一気に全てが面倒くさくなってしまった。

「話があるんだけど今いい?」

怯えるわけでも凄むわけでもなく、いつもと変わらず軽く声を掛けてきたのは梨央だった。

「悪いけど時間ないの」

そのまま梨央の横を通り過ぎようとすると、「ちょっと待ってよ」と腕を掴まれ止められてしまった。

どいつもこいつも何なんだ。

私なんて無視して、二人で仲良くやってくれればそれでいいのに。

二人揃って私の存在をないがしろにして裏切ったくせに、今さらどの面下げて話があるなんて言えるのだろう。
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