ただいま冷徹上司を調・教・中!
二人にとっては私の存在が邪魔で、早く別れて正式に付き合いたかったのかもしれない。

だからといって、こんなやりかたは感心も納得も理解もできないけれど。

決して思いやりや優しい気持ちからではないけれど、別れたのだから関係ないという思いで堂々と付き合えと言ったつもりだったのに。

梨央は目を丸くしたかと思うと突然吹き出して笑い始めた。

「な……なにが可笑しいの?」

私のほうが混乱して眉をしかめると、梨央はクックッと喉を鳴らして笑いながら「ごめん」と目尻に浮かんだ涙を指で拭った。

もちろんそれは私に対する罪悪感などではなく、たんなる笑い涙だ。

「千尋って、たまに本気で面白いこと言うわよね」

「どういう意味よ」

「私、絶対に付き合わないわよ?千尋の彼となんか」

いや、もう彼氏ではなく元彼なんだけどね。

「言っとくけど、別に千尋に遠慮して付き合わないとかじゃないから安心してね?本当に付き合う気がないだけだから」

「付き合う気がないのなら、どうしてあんなことになったのよ」

そもそもセックスは好きという気持ちが前提で成り立つものじゃないのか?

「なんて言うか……クセ?私、基本的に難攻不落な男や彼女持ちの男じゃないと欲情しないのよ。でも安心して?欲情と愛情はイコールじゃないわ。好きでもなんでもないし、今後付き合うつもりも予定もないから」

そう言ってのけた梨央に対して湧いた感情は怒りなどではなく、もはや驚きしかなかった。
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