ただいま冷徹上司を調・教・中!
こんなとき、なんと言ったらいいんだろう。

私の人生の中でこんな経験は一度もなく、当然なにが正しいことなのかの判断がつかない。

けれど一番気になることは。

「あの……私……平嶋課長にご迷惑かけちゃいました……?」

恐る恐るそう聞くと、平嶋課長はとても深い溜め息をついて、ベッド脇の椅子に腰かけた。

「久瀬……」

「……はい」

「お前はこの状況を見て、俺に何一つ迷惑をかけていないと思えるのか?」

眉をしかめて無造作になってしまった髪をかき上げながら、平嶋課長は長い足を組んだ。

「思いません……」

「だろうな」

平嶋課長の視線は鋭くても色気があって、恐ろしいほどの破壊力だ。

きっと何人もの女性がこの視線の虜になるに違いない。

だから私は平嶋課長が苦手なんだ。

「ご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありませんでした」

いろんなことが気になるけれど、なにをどう迷惑かけたのかなんて聞けやしない。

たとえ下着姿であったとしても、自分の身体の変化くらいはわかる。

どうやら私と平嶋課長はいたしていないらしい。

それだけでもよしとしなくては。

私はそう自分を納得させることにした。

「そう不安そうな顔をするな。俺達は何もない」

「それは心配してません。私に手を出すほど平嶋課長は飢えてないとわかってるので」

私がそう言うと、「なんだその理屈は」と平嶋課長は頭を抱えた。
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