ただいま冷徹上司を調・教・中!
平嶋課長は先ほど出てきた洗面所に向かい、バスローブを取ってきてくれて渡してくれた。

「ありがとうございます」

私がノロノロと袖を通して前を結ぶと、平嶋課長は椅子に座って邪魔になりそうなほど長い足を組んだ。

「お前、どこから覚えてないんだ?」

「どこからって……」

あらたまってそう聞かれると、一体いつからなんだろう。

平嶋課長に対する梨央達、女性社員陣のあからさまなアプローチに付け入るスキがないことを悟り。

和宏の私の顔色を伺うような気持ちの悪い視線にウンザリして、段々とイライラしてしまい、紗月さんと瑠衣ちゃんが止めるのも聞かずに飲み続けてしまった。

その結果、飲み会開始一時間を過ぎた頃には既にフラフラになったのは覚えている。

帰りの方向が同じだからと言って、瑠衣ちゃんが私を家まで送るからという話になっていたのも、なんとなくは覚えている。

けれどどうして今この状況になっているかの記憶は……。

「どこもかしこも覚えてません……」

ガックリと項垂れると、平嶋課長は「はぁぁ……」と眉間を摘まんで溜め息をついた。

「歓迎会のお開き間近に席を立ったら、お前はフラフラしながらトイレから出てきてぶっ倒れそうになってたんだ」

……自分のことなのに、お手洗いに立ったことすら覚えていない。

「何とか支えたら、お前は突拍子もないことを言いながら、そのままぶっ倒れたんだよ」

勝手に夢だと思い込んでいた超絶イケメンのイケボは、平嶋課長だったのか……。
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