ただいま冷徹上司を調・教・中!
平嶋課長は会社ではあまり表情を崩すことがない。

なのでこんなに多種類な表情を見るのは初めてだ。

とはいっても、決していい表情ではないのだが。

「俺が朝まで久瀬と一緒にいることになった理由は、できれば語りたくない」

ふいっと視線を逸らす平嶋課長が心底嫌そうなのはわかる。

けれどホテルの一室で下着姿のまま上司と朝まで過ごした理由は、女にとってうやむやにはできるはずがない。

「平嶋課長が語りたくなくても、私は語ってもらわなくちゃ困ります。見ての通り、私も立派な女なので」

下着姿のままベッドに寝ていたということは、私の服を脱がせたのは間違いなく平嶋課長だ。

ということは……見られたということでしょう?

だったら説明責任を果たしてもらわなくては。

強気な視線を向けると、平嶋課長は観念したかのように肩を竦めて組んだ足を戻し、椅子に深く座りなおした。

「俺も久瀬をベッドに運んだらすぐに帰ろうと思ってたよ。でも、それができなかったんだ」

眉を寄せ目を伏せた平嶋課長のフェロモンが恐ろしくて、私は思わず固唾を呑んだ。

もしかしたら私……夢と現実がごっちゃになってしまって、誘ってしまったんだろうか。

最後までヤッてなくても途中までとか。

平嶋課長も据え膳食わぬは男の恥、的な感じで……。

「ベッドに寝かせようとしたら、お前がいきなり俺のスーツの胸元を掴んで……」

やっぱり……私が襲ったのか……。
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