ただいま冷徹上司を調・教・中!
そう、全てが無難で〝悪くはない〟男だった。
散々男から裏切られ、傷付けられてきた私は、倍率のない平穏な恋愛ができる男を厳選したつもりだった。
幸い和宏は私にとって本当にいい彼氏で、とてもうまくいっていると思っていたのに。
なのに……昨夜のアレはいったい何なんだ。
くっそ腹が立つ。
泣いたり苦しくなったり落ち込んだり。
浮気現場を目の当たりにした女はいろんな感情を爆発させる生き物だ。
しかし慣れ過ぎたのか、愛情がただの情になってしまっていたのかはわからないが、私はただただ腹が立って仕方がなかった。
その時点でもう、彼とはすでに終わっているのだろう。
嫉妬や未練が先に来ないことがそれを物語っていた。
始業時間を迎えるチャイムが鳴ると、社員は一斉に立ち上がる。
毎週月曜日恒例の朝礼が始まるのだ。
重役の挨拶の後、毎週社員が一人前に出て抱負を述べるのだが。
「うげ……」
私は思わず誰にも聞こえないような小さな声で唸った。
事もあろうに前に出てきた男性社員は、さっきまで私が顔も見たくないと思っていた和宏だったからだ。