ただいま冷徹上司を調・教・中!
「公衆の面前でビンタされるくらいのこと、やらかしたんですか?」

私には無関係だということはわかっている。

けれど好奇心のほうが先に立ち、ついつい踏み込んだことを聞いてしまった。

「あの人、彼女ですか?それとも浮気相手とか?」

モテる男は何人も女がいるという浅い先入観があるもので、ついついそんなことを口走った。

私の言うことを理解できないとでも言うように、平嶋課長は首を傾げて眉を顰めた。

「久瀬が俺のことをどんな目で見ているのか、よくわかった」

「変な目では見てません。それだけのお顔をお持ちなんだから、そりゃ入れ食い状態だろうなぁと思ってるだけです」

「偏見だ」

怯んでしまうほどスッパリと言われると、平嶋課長は誠実な恋愛とやらができる人なのか?と思えてきた。

「じゃ、彼女だったんですね?」

「……そのはずだったんだけどな」

ちゃんと断言できないあたり、今の状況が上手く把握できてないないのかもしれない。

「3ヶ月くらい会ってなかったから……なのか?」

3ヶ月も彼女とデートしてなかったということか。

「電話やメールなんかでフォローしてました?」

平嶋課長が彼女とマメに連絡を取るなんて想像もできないけれど、ポイントポイントでしっかりフォローすれば、3ヶ月会わなくてもなんとかなるんじゃないだろうか。

「ゆっくり話す時間もないし、特に話したいこともない。なのにわざわざ連絡する必要があるのか?」

「はっ?」

じゃあ何か?

この人は3ヶ月間、彼女に連絡すらしないまま会ってもなかったということなのか?

「そりゃフラれます……」

さっきまで哀れに見えていた平嶋課長が鬼に見え、彼女のほうか哀れに思えてきてしまった。
< 69 / 246 >

この作品をシェア

pagetop