ただいま冷徹上司を調・教・中!
顔だけではなく声も聴きたくないと思っていた私は、和宏の話など当然耳にも入ってこない。
それにしても……だ。
私はいったいこの人のどこが良くて二年半も付き合ってきたのだろうか。
女は切り替えが早いとは言ったもので、もう微塵も彼の好きだったところを思い出せない。
今となっては本当に彼が好きで付き合ったのかも怪しいところだ。
確かに優しかったし、付き合っている時間はとても穏やかに過ぎていったとは思う。
しかしそれ以外に彼との楽しかった日々が思い出せないというのは、いささか問題ではないだろうか。
結局は、本気で好きになった男には裏切られ、ある程度の妥協をした男にも裏切られるということを今回も学んだだけだった。
これまでたくさんの例を体験して学んだが、残念なことにまだ一度も実践で役に立ったことはない。
なんて悲しすぎる恋愛経験なのだろうか。
イイ男でも普通の男でも結果が同じなら、今度は思いっきりハイスペック男と付き合ってやる。
そんな男と付き合えるか付き合えないか。
それは別にして、私は無駄に力を込めて前を向くことにした。
ふと私と目が合い表情を明るく変えたアホヅラの和宏が滑稽で、愛想笑いすらも浮かんではこなかった。