ただいま冷徹上司を調・教・中!
水曜日のランチタイムの休憩室は通常に比べて利用者が少ない。

会社から徒歩五分もかからない飲食店の定食が30%オフだからだ。

一人暮らしの私と瑠衣ちゃんや主婦の沙月さんにとってありがたい金額であるのは確かだが、一歩でも出遅れるとすぐに満席になってしまうのが難点だ。

私の電話対応で数分出遅れた私達は、目の前のコンビニでお弁当と食後のプリンとおやつを買い、いつもの休憩室でランチタイムを楽しんでいた。

私達の和やかなひと時をぶち壊してくれたのは、今ではすっかり耳障りに変わってしまったこの声だった。

「ランチ中、失礼」

頭上から降ってきた声の主は、振り返らなくても梨央だとわかる。

あろうことか梨央は平然と四人掛けテーブルの空きイスを引いて、横着に腰掛けてきた。

私の隣には瑠衣ちゃん、目の前には沙月さんが座っていたので、梨央が座ったのは私からすると斜め前の沙月さんの隣だ。

極力視界に入れないことは可能だが、あまりの厚かましさと面の皮の厚さに驚いて凝視してしまった。

「ちょっと、何の用ですかっ」

瞬時に戦闘態勢になった瑠衣ちゃんを宥めるかのように、テーブルの下でそっと瑠衣ちゃんの手を握ると、私の気持ちを察してくれたかのようにグッと唇を噛んだ。

「千尋の仔犬ちゃんじゃないんだから、そんなに噛み付いてこないで」

軽くあしらうような言い方にカチンときたであろう瑠衣ちゃんは、とても小さく舌打ちをした。

「で?」

梨央に負けじとふてぶてしく腕を組んで一言だけ問いかけると、梨央は嬉しそうにニコリと笑いかけてテーブルに肘を立てて手を組むと、顎を乗せて身体を前に出した。
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