ただいま冷徹上司を調・教・中!
「平嶋課長に直接聞いたの。千尋とのこと」

笑っているその瞳の奥が本物なのかどうなのか。

つい数週間前までは親友だと思っていた女の表情だ。

わからないはずがない。

「……そう」

確実に疑問を持っている目だ。

「平嶋課長って、あんなにあっさりと認める人だったんだねぇ。もっと冷たくあしらわれると思ってたからビックリした」

不敵な笑いが色濃くなってきて、私の鼓動が少しづつ早くなってくるのがわかった。

「まるで用意された答えのように、誰が聞いても同じ答え。千尋とのことをみんなに知らしめたいのかなって思ったけど、二人が以前以上に親しくなった感じもないし、不思議だわぁ」

この洞察力の鋭さは、いったいなんなのだろう。

見つめられると少しの表情の変化から、全てを見透かされそうで恐ろしい。

「恋愛の仕方は人それぞれでしょう?外野がとやかく心配しなくても、二人がよければいいじゃない」

柔らかく梨央を諭してくれた沙月さんだけれど、こんなことで引き下がる女なら親友の彼氏の具合を試すような真似はしないだろう。

梨央は人の言葉に耳を傾けるようなタマじゃない。

「外野が騒ごうがどうしようが、二人が上手くいってればいいんじゃないですか?」

なんて態度のデカさ。

先輩の沙月さんにむかっても物怖じ一つせず、逆に跳ね返していくなんて。

「ま、いいわ。そのうちいろいろと教えてね。今度は二人の時にでも話しましょ」

そそくさと席を立ち、「お邪魔しましたー」と手を振りながら去っていった梨央を見ながら、やっぱり本当にそろそろ何とかしなくてはならないと思った。

そしてそのチャンスは呆気なく数時間後に訪れてくれた。
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