ただいま冷徹上司を調・教・中!
ノー残業デーというのは大変ありがたいものだ。
ノー残業と簡単に言っても前日はいつもより遅くなるし、翌日は午前中からバタバタしてしまう。
抱えている仕事が多ければ、このシステムはありがた迷惑になるのだけれど、今日は本当にありがたい。
定時で会社を出た私と沙月さんと瑠衣ちゃんの目の前には、颯爽と駅に向かう平嶋課長の背中。
そして後ろには少し間隔をあけて梨央がいる。
「千尋ちゃん、どうする?」
「平嶋課長となんでもいいから話したいところですね」
「ちょっと追いかけてみれば?」
二人が口々にそう言ってくれるので、私も厚かましいが勇気が出てきた。
「私、ちょっと行ってみます」
正直なところ、平嶋課長に声をかけても何を話していいかわからない。
けれど後ろに梨央がいるならば、なんとか平嶋課長と並ばなければ。
二人に「行ってきますっ」と力を込めて宣言すると、私は勢いよく平嶋課長の元へ駆け出した。
「平嶋課長っ」
そんなに大きな声で呼びかけていないつもりだが、私の声に反応して周りの社員の目が一斉にこちらを捉えた。
「久瀬か。お疲れ様」
「お疲れ様です」
相変わらず微笑みもしない平嶋課長だけれど、私は取り敢えず平嶋課長の隣をキープすることに成功した。
「あの……平嶋課長」
「なんだ?」
何を話せばいいのか思いつきもしないが、伝えておきたい言葉はある。
「あんな形で平嶋課長に無理やり取り引きさせたにもかかわらず、ちゃんと守ってくれてありがとうございます」
二人にしか聞こえない距離と声で伝えたのは、嘘の肯定を繰り返してくれている平嶋課長への感謝だった。
ノー残業と簡単に言っても前日はいつもより遅くなるし、翌日は午前中からバタバタしてしまう。
抱えている仕事が多ければ、このシステムはありがた迷惑になるのだけれど、今日は本当にありがたい。
定時で会社を出た私と沙月さんと瑠衣ちゃんの目の前には、颯爽と駅に向かう平嶋課長の背中。
そして後ろには少し間隔をあけて梨央がいる。
「千尋ちゃん、どうする?」
「平嶋課長となんでもいいから話したいところですね」
「ちょっと追いかけてみれば?」
二人が口々にそう言ってくれるので、私も厚かましいが勇気が出てきた。
「私、ちょっと行ってみます」
正直なところ、平嶋課長に声をかけても何を話していいかわからない。
けれど後ろに梨央がいるならば、なんとか平嶋課長と並ばなければ。
二人に「行ってきますっ」と力を込めて宣言すると、私は勢いよく平嶋課長の元へ駆け出した。
「平嶋課長っ」
そんなに大きな声で呼びかけていないつもりだが、私の声に反応して周りの社員の目が一斉にこちらを捉えた。
「久瀬か。お疲れ様」
「お疲れ様です」
相変わらず微笑みもしない平嶋課長だけれど、私は取り敢えず平嶋課長の隣をキープすることに成功した。
「あの……平嶋課長」
「なんだ?」
何を話せばいいのか思いつきもしないが、伝えておきたい言葉はある。
「あんな形で平嶋課長に無理やり取り引きさせたにもかかわらず、ちゃんと守ってくれてありがとうございます」
二人にしか聞こえない距離と声で伝えたのは、嘘の肯定を繰り返してくれている平嶋課長への感謝だった。