マインドトラベラー
【黒き雷光⑤ 反動】

「こんにちは、今日も宜しく。お願いね、いつもの」
「いつものって何のことだか」 わからない。全く。
「おじさんはブレないわねぇ、いつまでも。まったく」
「始めるぞ。さっさとそこに横になれ。いつもの...」

通りだと言おうとしたが、いつもとの違いに
気がついた。「何かあったか?」 つい聞いてしまった。
「言えるわけないよ」 彼女はうつむいてしまった。
こうなると機嫌直しは大変だ、大いに。

涙ぐむ娘は突如身をかがめ、叫んだ。
動物の様に言葉にならぬうめき声。からだを
震わせて、私に向ける縋るような視線。

改めて思い知るのは、こんなにも傷んだ
魂で必死に生きる目の前の少女を
救えない、という事実だ。迫りくる絶念。
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