マインドトラベラー
【黒き雷光⑦後編 バラッド:少女の変化】
少女の寝顔を眺めつつ、一息入れる雷光は、
通信要求に気づく。画面を開けば画面には
ゴブリンの顔、ドアップだ。
「今度は何です、マーシャさん?」
「あれ?どうしてバレちゃった?」
「あなた以外にいませんよ。こういう事をする人は」
「次からもっと工夫します」 テヘっと笑うマーシャ見て
雷光、とても冷ややかな視線を向けて返事する。
「私も今は勤務中なので、用事は手短に」
「その子のことよ。最近は、家でも挨拶するそうよ」
「挨拶位するでしょう」
「あなた、聞いてなかったの?」
「何を?」
「家での様子とか」
「何で?」
「…そりゃああなたもトラベラー。精神世界が専門で
個人の事情にゃ興味ないでしょうけど、これだけ長いこと
一緒にいるのに、もうちょっと関心持ってもいいんじゃない?」
「いやいやそれはあり得ない。クライアントにそのような。。。」
「それともやはりシオンちゃん一筋?」
「どうしてそれを。。」
「ちょっとねー」
「まあいい、それで本題を早く済ませて貰いましょう」
「さっき連絡、入ってね。次は更新しないって」
「了解」
「理由は、、」
「そこには興味がないからいい。クライアントの事情だし、
私がどうこう言う事じゃないのは承知の上ですよ」
「寂しくなるわねー、いいの? よく言うじゃない、
世間でも。手のかかる子ほど可愛いって」
「あの子に手などかかりません。可愛い事は認めます」
「ともあれ、この3年間、お疲れ様」
「いや、別に。大した事はしてないし」
「今後の事が気にならない?」
「そりゃあ多少は気になります。この決定は、本当に、
彼女が望んだ事ですか?」
「わかりませんが、両親の見立て違いの可能性、
大きいのではないかしら」
「それだとひと荒れ来るでしょう」
「一応備えは忘れずに」
「親〜の方が面倒な事ばっかりを言ってくる」
−−−−
いつの間にやら目覚めてた少女は黙って話を聞いていた。
シオンちゃんって誰だろう。孫みたいなものかな?
そういやアイツの家族って、全然気にした事もない。
たかが家族というだけで一緒にいるのが当たり前、
なんて絶対許さない。何で私じゃないんだろ。
それにしたってお父さん、打ち切りなんてひどいじゃない。
いくら私が何も言わないからって。
おじさん、ホントに私には全然関心無いンだな。
相手になってくれたのも仕事だから。ただそれだけ。
それでもいいや。私には今なら持てる、揺るぎない
希望って奴。だって、それ、おじさんからの贈り物。
私はしっかり受け取った。もう絶対に離さない。
それに今なら新しい目標だって持てるんだ。
−−−−
時間は静かに過ぎてゆく。少女も再び束の間の
眠りに落ちて、雷光は何やらゴソゴソ手慰み。
少女はやがて目覚めたが、様子はいつもと変わらない。
静かな部屋で雷光がデスクワークの真っ最中。
「起きたか」 彼は声をかけ、彼女の方を振り返る。
「あの、ねぇ、一つ聞いていい?」
「個人情報以外なら」
「いや、いい。今はやめておく」
「そうか、分かった。気が向いた時にいつでも聞いてくれ」
この時少女が雷光に何を聞こうとしたのかを
彼が知る事は無かった。ごくありふれた日常の
一コマとして過ぎてゆく小さな会話が少女には
宝のようなものだった。
少女の寝顔を眺めつつ、一息入れる雷光は、
通信要求に気づく。画面を開けば画面には
ゴブリンの顔、ドアップだ。
「今度は何です、マーシャさん?」
「あれ?どうしてバレちゃった?」
「あなた以外にいませんよ。こういう事をする人は」
「次からもっと工夫します」 テヘっと笑うマーシャ見て
雷光、とても冷ややかな視線を向けて返事する。
「私も今は勤務中なので、用事は手短に」
「その子のことよ。最近は、家でも挨拶するそうよ」
「挨拶位するでしょう」
「あなた、聞いてなかったの?」
「何を?」
「家での様子とか」
「何で?」
「…そりゃああなたもトラベラー。精神世界が専門で
個人の事情にゃ興味ないでしょうけど、これだけ長いこと
一緒にいるのに、もうちょっと関心持ってもいいんじゃない?」
「いやいやそれはあり得ない。クライアントにそのような。。。」
「それともやはりシオンちゃん一筋?」
「どうしてそれを。。」
「ちょっとねー」
「まあいい、それで本題を早く済ませて貰いましょう」
「さっき連絡、入ってね。次は更新しないって」
「了解」
「理由は、、」
「そこには興味がないからいい。クライアントの事情だし、
私がどうこう言う事じゃないのは承知の上ですよ」
「寂しくなるわねー、いいの? よく言うじゃない、
世間でも。手のかかる子ほど可愛いって」
「あの子に手などかかりません。可愛い事は認めます」
「ともあれ、この3年間、お疲れ様」
「いや、別に。大した事はしてないし」
「今後の事が気にならない?」
「そりゃあ多少は気になります。この決定は、本当に、
彼女が望んだ事ですか?」
「わかりませんが、両親の見立て違いの可能性、
大きいのではないかしら」
「それだとひと荒れ来るでしょう」
「一応備えは忘れずに」
「親〜の方が面倒な事ばっかりを言ってくる」
−−−−
いつの間にやら目覚めてた少女は黙って話を聞いていた。
シオンちゃんって誰だろう。孫みたいなものかな?
そういやアイツの家族って、全然気にした事もない。
たかが家族というだけで一緒にいるのが当たり前、
なんて絶対許さない。何で私じゃないんだろ。
それにしたってお父さん、打ち切りなんてひどいじゃない。
いくら私が何も言わないからって。
おじさん、ホントに私には全然関心無いンだな。
相手になってくれたのも仕事だから。ただそれだけ。
それでもいいや。私には今なら持てる、揺るぎない
希望って奴。だって、それ、おじさんからの贈り物。
私はしっかり受け取った。もう絶対に離さない。
それに今なら新しい目標だって持てるんだ。
−−−−
時間は静かに過ぎてゆく。少女も再び束の間の
眠りに落ちて、雷光は何やらゴソゴソ手慰み。
少女はやがて目覚めたが、様子はいつもと変わらない。
静かな部屋で雷光がデスクワークの真っ最中。
「起きたか」 彼は声をかけ、彼女の方を振り返る。
「あの、ねぇ、一つ聞いていい?」
「個人情報以外なら」
「いや、いい。今はやめておく」
「そうか、分かった。気が向いた時にいつでも聞いてくれ」
この時少女が雷光に何を聞こうとしたのかを
彼が知る事は無かった。ごくありふれた日常の
一コマとして過ぎてゆく小さな会話が少女には
宝のようなものだった。