マインドトラベラー
【黒き雷光⑪ バラッド:アシスタント】

 「ごめんなさい。私ったら」
 「いえいえ、気持ちは分かります」

アシスタントはナナよりも二歳年下の女性だ。
一見清楚で儚げで「守ってあげたい」タイプだが、
実は戦闘愛好者。バトルジャンキーなのだった。
相手構わず噛み付いて、暴れて周囲を破壊する。

その上当の本人は暴れた記憶がないときた。
「治療」と称して関わった数多の組織や専門家。
その尽くが壊滅し、病院送りは数しれず。
それでも拘束されないで普通(?)に生活出来るのは

類いまれなる才能を彼女が持っていたからだ。
更にはすべての騒動で死者が皆無である事も
彼女にとって幸いな事であったと言えるだろう。
そんな彼女を完璧に沈静化した人物が

黒き雷光その人だ。彼が一緒にいるだけで
彼女は普通に振る舞った。他にも彼女に関わった
トラベラーたちはいたものの、その尽くが失敗し、
惨事を招いて退いた。

何故彼だけがこんなにも違う結果を出せるのか、

当然調査も分析もされたが未だ未解決。
「雷光の謎」のひとつに加える事になっただけ。
二年も前の事だった。そして今回雷光の
オフィス移転に伴って、国は彼女を雷光に

助手という名で送り込み、厄介払いをしてのけた。
彼女は雷光オフィスで研究自体は継続し、
データはすべて当局に吸い上げられる事になり、
彼女もそれを受け入れて雷光の所にやって来た。

オフィスの地下には広大な研究施設が存在し、
彼女はそこに住んでいた。。否。事実は全く逆だった。
施設の上に、雷光のおニューのオフィスを建てたのだ。
事実を知っても、雷光は何も反応しなかった。

彼にとっての関心事。それは仕事が出来ること。
他の事など意味がない。役に立ちさえすればいい。
アシスタントの新人も、オフィス管理の新人も
この上もなく優秀で、不満を感じる事も無い。

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