マインドトラベラー
【マインドトラベラー詩話(一)舞台裏】
以下は、既に各話のまえがき等で説明してきた事と重複
するかもしれませんが、これまでのまとめとして、この辺
で一度記述しておきたいと思います。
[作品の素性]
本作は元々英語サイトに掲載中の The Mindtraveller
の姉妹編として書き始めました。英語版はMindtraveller
の世界や設定、どのような手順で精神世界を旅するのか
などの説明を細かく描いていく方針でしたが、日本語版
は説明的な記述は済んだという想定で、全く別なストー
リー展開の中で、登場人物たちの心の暗部にスポットを
当てていく様にしています。
[ソネット]
そもそも英語版はソネット連詩による長編ストーリー
を書きたくて始めた物でした。何故英語か、というと、
巷の「自称ソネット」を見るまでもなく、日本語では
14行ある以外はまともなソネットは書けないからです。
第一日本語ではこう書く、という作法の定義もありませ
ん。とはいえ、このまま放っておくと、いつまでたって
も日本語でソネットを書ける様にはならないので、日本
語ソネットを研究する目的で日本語版も開始しました。
定義がない、という事は勝手にやっても構わないという
事ですから。
私が知る限り日本には日本語でソネットを書く様な詩
学は存在しませんが、他でもやってる試行錯誤の一種と
して、5+3+4+5+4の五句を一行とする定型詩と
して書きました。何故五句かというと、最初に勉強した
ドイツ語詩学ではソネットは弱強五歩格だったからです。
モーラ数は、正直5+7+5+7+7でも良かったので
すが、1行が長くなってしまうので西洋言語の強弱、弱
強、といったmeterのパターンは使えないと思い、五歩
を五句に置き換え、一句当たりのモーラ数を適当に固定
する事で対応しようとしました。実際に書いてみると、
5+7+5+4のようになってしまい、これじゃ四句
一行だなぁと思ってますが、しばらくはこのままいこう
と思います。
[今様体と長歌]
日本語版マインドトラベラーではこのほかソネット
の長さでは描ききれない部分を今様体(七五調+七五調)
を1行とする土井晩翠方式を使ってでバラッドとして書
きました。土井晩翠は、この形式をホメーロスの叙事詩
の邦訳を作る時に用いています。私もこれに習って自分
の叙事詩をこの方式で書き始めたのですが、叙事詩だけ
でなくバラッドやソネットにも応用したのでした。最近
では同じバラッドでも長歌(五七調+五七調)を1行と
する形式も使っています。この時は当然反歌が最後につ
きます。英語では弱強五歩格は叙事詩でもソネットでも
バラッドでも使われる形式です。日本語で今様体を同じ
様に使いまわしても良いだろう、と勝手に判断してこの
様にしてみました。
[ルバイヤート]
本作で最も新しい試みが「ルバイヤート」の採用です。
ペルシャの4行詩ルバーイイを複数集めたものをルバ
イヤートといいます。私は日本語で書く時は
(5+7+7)+(5+7+7)を2つ重ねます。形式的に
は旋頭歌を2首続けるのと同じです。英語で書く時は
7音節✕4行で書きます。1、2、4行目で脚韻を踏む
ので丁度漢詩の七言絶句と同じになります。一首で二度
美味しいので結構面白くて使っています。詩の作法に詳
しい人から見たら邪道かもしれませんが、私は詩人でも
詩の専門家でもないのできままにやる事にしています。
[設定]
本作の主人公たち、マインドトラベラーは、人の精神
世界に大きな影響力を持つスキルの保持者なので、特定
の人物や勢力が脅迫する等して悪事に関与させたりする
事を防止するために、個人情報が徹底的に秘匿されて
います。このため本名や住処、家族情報などは隠され、
連絡はエージェント経由でしか行えず、呼び名は通称
(駆け出しの頃は合格順位、一人前になると恥ずかしい
二つ名)のみになります。黒き雷光が未だに「じゅうご君」
と呼ばれる事があるのは15位だったから、ナナはまだ
駆け出しなので二つ名は無く、7位だったから「ナナ」
です。当然年度ごとに別な「じゅうご君」や「ナナちゃん」
も存在します。そして、後輩(部下)とはいえナナの方が
成績優秀といえます。もしも性別が逆だったら「いちごちゃん」
とか「ナナオ君」とか呼ばれていると思います。当然の
事ながら、別の言語圏では別な名前のつけ方をしています。
アシスタントについてはまだ細かい設定や名前を出していません。
主人公たちの時代は、英語版からは「歴史」と呼べる
ほどの年月が経過しており、初代トラベラーに近い世代の
英語版キャラたちは日本語版の人々から見たら過去の人、
伝説の人、歴史上の人、という扱いです。この頃のトラベラー
たちは主人公たちのように素性を隠す様な事はせず、普通に
本名を名乗っています。当然ながら両者には面識はなく、
出会って会話する様な事もありません。
一方、他作品とのつながりはそれなりにあります。同世界、
同時代のキャラクターたちの話がいずれ登場する事になる
かもしれません。
[マインドトラベラーの異能]
マインドトラベラーが心理療法のエキスパートなのは、
ジョハリの窓を4つとも制覇出来る能力を持っているから
です。ジョハリの窓では4つめの窓は本人であれ他人であ
れ認知する事が出来ません。そういう風に定義されていま
す。それは、観察して実態を客観的に理解し、適切な方法
で対処するという科学的なアプローチが不可能である事を
意味します。マインドトラベラーは、シンボリズムを足掛
かりにその領域にも踏み込む事が出来るので、この制限を
受けない、というのが設定です。症状を観察して対応策を
練るのではなく、いきなり見えている範囲の物を象徴とし
て受け止め、それを解釈していく事によって本質に迫るの
で、どの窓であろうと関係ない、という理屈です。素人が
真似をして象徴を取り違えると、的はずれなアクションを
起こしてクライアントを傷つける結果を招く事にもなりま
すが、それを間違えないからこそのエキスパートでもある
のです。
以下は、既に各話のまえがき等で説明してきた事と重複
するかもしれませんが、これまでのまとめとして、この辺
で一度記述しておきたいと思います。
[作品の素性]
本作は元々英語サイトに掲載中の The Mindtraveller
の姉妹編として書き始めました。英語版はMindtraveller
の世界や設定、どのような手順で精神世界を旅するのか
などの説明を細かく描いていく方針でしたが、日本語版
は説明的な記述は済んだという想定で、全く別なストー
リー展開の中で、登場人物たちの心の暗部にスポットを
当てていく様にしています。
[ソネット]
そもそも英語版はソネット連詩による長編ストーリー
を書きたくて始めた物でした。何故英語か、というと、
巷の「自称ソネット」を見るまでもなく、日本語では
14行ある以外はまともなソネットは書けないからです。
第一日本語ではこう書く、という作法の定義もありませ
ん。とはいえ、このまま放っておくと、いつまでたって
も日本語でソネットを書ける様にはならないので、日本
語ソネットを研究する目的で日本語版も開始しました。
定義がない、という事は勝手にやっても構わないという
事ですから。
私が知る限り日本には日本語でソネットを書く様な詩
学は存在しませんが、他でもやってる試行錯誤の一種と
して、5+3+4+5+4の五句を一行とする定型詩と
して書きました。何故五句かというと、最初に勉強した
ドイツ語詩学ではソネットは弱強五歩格だったからです。
モーラ数は、正直5+7+5+7+7でも良かったので
すが、1行が長くなってしまうので西洋言語の強弱、弱
強、といったmeterのパターンは使えないと思い、五歩
を五句に置き換え、一句当たりのモーラ数を適当に固定
する事で対応しようとしました。実際に書いてみると、
5+7+5+4のようになってしまい、これじゃ四句
一行だなぁと思ってますが、しばらくはこのままいこう
と思います。
[今様体と長歌]
日本語版マインドトラベラーではこのほかソネット
の長さでは描ききれない部分を今様体(七五調+七五調)
を1行とする土井晩翠方式を使ってでバラッドとして書
きました。土井晩翠は、この形式をホメーロスの叙事詩
の邦訳を作る時に用いています。私もこれに習って自分
の叙事詩をこの方式で書き始めたのですが、叙事詩だけ
でなくバラッドやソネットにも応用したのでした。最近
では同じバラッドでも長歌(五七調+五七調)を1行と
する形式も使っています。この時は当然反歌が最後につ
きます。英語では弱強五歩格は叙事詩でもソネットでも
バラッドでも使われる形式です。日本語で今様体を同じ
様に使いまわしても良いだろう、と勝手に判断してこの
様にしてみました。
[ルバイヤート]
本作で最も新しい試みが「ルバイヤート」の採用です。
ペルシャの4行詩ルバーイイを複数集めたものをルバ
イヤートといいます。私は日本語で書く時は
(5+7+7)+(5+7+7)を2つ重ねます。形式的に
は旋頭歌を2首続けるのと同じです。英語で書く時は
7音節✕4行で書きます。1、2、4行目で脚韻を踏む
ので丁度漢詩の七言絶句と同じになります。一首で二度
美味しいので結構面白くて使っています。詩の作法に詳
しい人から見たら邪道かもしれませんが、私は詩人でも
詩の専門家でもないのできままにやる事にしています。
[設定]
本作の主人公たち、マインドトラベラーは、人の精神
世界に大きな影響力を持つスキルの保持者なので、特定
の人物や勢力が脅迫する等して悪事に関与させたりする
事を防止するために、個人情報が徹底的に秘匿されて
います。このため本名や住処、家族情報などは隠され、
連絡はエージェント経由でしか行えず、呼び名は通称
(駆け出しの頃は合格順位、一人前になると恥ずかしい
二つ名)のみになります。黒き雷光が未だに「じゅうご君」
と呼ばれる事があるのは15位だったから、ナナはまだ
駆け出しなので二つ名は無く、7位だったから「ナナ」
です。当然年度ごとに別な「じゅうご君」や「ナナちゃん」
も存在します。そして、後輩(部下)とはいえナナの方が
成績優秀といえます。もしも性別が逆だったら「いちごちゃん」
とか「ナナオ君」とか呼ばれていると思います。当然の
事ながら、別の言語圏では別な名前のつけ方をしています。
アシスタントについてはまだ細かい設定や名前を出していません。
主人公たちの時代は、英語版からは「歴史」と呼べる
ほどの年月が経過しており、初代トラベラーに近い世代の
英語版キャラたちは日本語版の人々から見たら過去の人、
伝説の人、歴史上の人、という扱いです。この頃のトラベラー
たちは主人公たちのように素性を隠す様な事はせず、普通に
本名を名乗っています。当然ながら両者には面識はなく、
出会って会話する様な事もありません。
一方、他作品とのつながりはそれなりにあります。同世界、
同時代のキャラクターたちの話がいずれ登場する事になる
かもしれません。
[マインドトラベラーの異能]
マインドトラベラーが心理療法のエキスパートなのは、
ジョハリの窓を4つとも制覇出来る能力を持っているから
です。ジョハリの窓では4つめの窓は本人であれ他人であ
れ認知する事が出来ません。そういう風に定義されていま
す。それは、観察して実態を客観的に理解し、適切な方法
で対処するという科学的なアプローチが不可能である事を
意味します。マインドトラベラーは、シンボリズムを足掛
かりにその領域にも踏み込む事が出来るので、この制限を
受けない、というのが設定です。症状を観察して対応策を
練るのではなく、いきなり見えている範囲の物を象徴とし
て受け止め、それを解釈していく事によって本質に迫るの
で、どの窓であろうと関係ない、という理屈です。素人が
真似をして象徴を取り違えると、的はずれなアクションを
起こしてクライアントを傷つける結果を招く事にもなりま
すが、それを間違えないからこそのエキスパートでもある
のです。