TOO MUCH PAIN
いつもは部屋に入ったとたんはじめてしまうくせに、今夜に限って違っていた。

きっとさっきのことを気にしているんだな・・・ずっと伏せ目がちで目をあわそうともしないのが、何だか切ない。


「おなか空いてない?なんか作ろうか?」


たまにはそんなかいがいしい事でもしてあげようと思ってキッチンに立つと、ビールが飲みたいというので冷蔵庫からビールとつまみを出してあげた。

そして、エイジと2人で珍しくテーブルを囲んでカンパイをする。


「そういえば飲めるんだっけ?」

飲んでいる姿は見た事はなかったな。

「たまに母さんに付き合って飲んでるよ・・・」

エイジは一気に缶ビールを飲み干すと、深い溜息をついていた。


「どうしたの、さっきの人が気になるの?」

そう聞くと、ウンと素直に頷いている。


「そうだよね、俺彼氏でもなんでもないもんね、誰とやろうが自由だよね・・・」

何だかヤキモチやいてくれているんだと思うと、ちょっと嬉しくなってしまう自分が居て、でもエイジは本気で落ち込んでいるから笑ってしまいそうなのを必死で我慢していた。


「あの人とは、さっき別れ話してたんだよ。」


ある意味本当のことを言うと、そうなんだってでも複雑な顔で笑った。


エイジはとても感がいいくせに、自分のこととなると鈍感なところがある。

私が過去に、色々あったことはなんとなく気付いているくせに、エイジと会ってからは誰とも寝ていないってことは知らないみたいだった。


きっと、気まぐれで誰とでもやる女とでも思っているんだろうなあ・・・
始まりがそうだったから、仕方がないけれど。

でも、それぐらいに思われていてちょうどいい。



初めてのとき以来、私から誘ったこともないし、まともにデートもしたこともないのだから。



私なんかが彼女だったら、エイジが可愛そうだ・・・

きっと彼には、可愛くて素直で、私よりずっと彼のことを好きになってくれる女の子が、これから絶対に現れるから。












< 14 / 36 >

この作品をシェア

pagetop