TOO MUCH PAIN
早く寝たからか、かなり早く起きてしまった。


目が覚めると、目の前にエイジの寝顔があって、柔らかな髪をなでる。

静けさにかすかな吐息ただ揺れている・・・
そんなフレーズを思い出した。



「おはよう」

目が覚めた彼をキスで起こしてあげると、私はカーテンを開けて朝陽を浴びた。


「そうだ、今日学校行かなきゃ・・・」


いつもはそんな日は泊まらないで終電とかで帰っていたのに、今日は私に付き合ってくれたんだな。


「エイジはまじめなんだなあ・・・」

そう言うと、そんなことないよって寝ぼけ眼で返事をする。


「泊まっちゃって大丈夫だったの?満さん心配してない?」


鉄さんから例の話を聞いていたから、ちょっと心配になった。


「大丈夫、寝る前にメールしたし。」


私は休みだったけれど、エイジが身支度を整えているので、一緒に着替えた。


「ねえ、朝ごはん食べに行こう。」

まだ早いから大丈夫だろうと思って誘うと、素直についてきてくれた。




冬の街は空気がきりりと引き締まって気持ちがいい。

こんな時間に起きているなんて、オール明けで帰ってきたときぐらいだ。



「どこ行くの?」

いつもの道を二人で歩く、朝ごはんもいつもの喫茶店だった。


「え?何でこんな時間にやってるの?」

不思議そうにドアを開けて、いつもの席に着くと、エイジは笑っていた。


「この店年中無休なんだよ。」

確かお昼の数時間だけ閉めてるとか言ってたかな・・・


他の席には、オールで飲んでいたんだろうってわかるどこかで見たことのあるバンドの人や、役者さん達がまだ飲んでいた。



「ママ、モーニング二つね。」


すぐにコーヒーとトーストとゆで卵が机の上に並べられて、私達は酒臭い隣の席の人たちを横目に、さわやかな朝ごはんと食べる。



「学校サボったりしないの?」

私が中学の頃は、よくお腹が痛いとかごまかしてサボってたなって思い出す。
義兄と色々あった翌朝は、本気でお腹が痛かったりしたしな…

「サボらないよ。ちゃんと行かないと色々言われるからね、親が。」

ただでさえ親が小説家で目立つから、目立つことはしたくないんだってそんな風に言う。


「昔はさ、先生や親や学校に反抗するのがかっこよかったんでしょ?
でも今はそうじゃないと思うんだよね。
真剣に俺たちのことを考えてくれてる先生とか親とかさ、そういう人に反抗するのってカッコわりーって思うんだよな。」


何だかこの子は大人なんだな。私なんてまだまだ親に甘えているもの・・・


「何だかそういうのって、逆にパンクっぽいよね。肯定的な精神姿勢って言うの?」


どっかのパンクバンドが、そんなことを言ってたなってぼんやりと思い出した。





早めに食べ終えると、エイジを駅前まで送った。


昨晩、義兄を送り出したときとはまったく違う気分。

また会えるよねって楽しい未来が見えるようなさよなら。


でも、こんな日がいつまで続くんだろうか・・・

だけどまだ今は、そんなに先のことは考えたくはなかった。



< 16 / 36 >

この作品をシェア

pagetop