完璧なんて存在しないんです。
私たちは人通りの少ない渡り廊下にやってきた。
「はぁ、疲れた。何なのあいつら、うるさいなぁ。」
……!?
今のはほんとに月咲くんから出た言葉なのだろうか。
「つ、月咲くん?」
「ん?あぁ、あたりだよ。なっちゃん」
そう言って月咲くんはにっこりと笑った。
「やっぱり。さっきまでのあんたは全部演技でしょ?」
「ふふ。やっぱり鋭いなぁ。俺こういうやつ。
うるさい女子の前では猫かぶってるの。
バラすなり追い出すなり何でもしていいよ。」
月咲くんは手を広げ困ったように笑ってみせる。
「ふはっ、そーゆーことか!」
翼くんは吹き出して。笑っている
「何?」
月咲くんは少し不快そうに眉を顰める。
「まぁ、そんな怒るなって!そんなことするわけないだろ?」
「は?何が言いたいの。」
月咲くんが翼くんを睨みつける。
翼くん…そろそろやばいんじゃ…
「月咲は俺たちに正直に言ってくれただろ?俺嬉しいぜ!
なぁ、俺たちと友達になってくれ
いいよな?2人とも?」
そんなの答えはひとつ。
「うん。もちろんだよ!」 「ふん。他人から知り合いになってあげるだけよ。」
「……ふはっ。」
月咲くんが急に吹き出す。
「みんな、面白いなぁ。俺の素を見ても友達になりたいなんて」
…?
「月咲くん?私たちは今の月咲くんもさっきの月咲くんも、全部含めて月咲くんだと思うよ。」
「そーだぞ月咲!今の俺たちはお前の全部を見た上で、
友達になりたいと思ったんだ。それは嘘じゃないぜ?」
「ふっ、だそうだよ王子?仲良くしてあげて?」
月咲くんは目を丸くしている。
ありえないとでも思っているのだろうか。
「…!?…ふふ、やっぱり面白い。……ありがとね、みんな」
月咲くんはふふっと微笑む。
一瞬その笑顔が寂しそうに震えたのは私の見間違えだろうか。
きっとそうだろう。
そんな私の気持ちを咎めるように月咲くんがパァっと笑って
「じゃあよろしくね。柚姫、翼、なっちゃん。」
今の一言が嬉しくて私はそんなことなんか忘れてしまった。