浅葱色が愛した嘘
『……ぐっ!?!?』
それは一瞬の出来事。
男がこちらに向かってくると思い、刀を構えた頃にはもう
自分の体は斬り裂かれていた。
熱くなる肩を抑え、膝をつく。
早くなる鼓動。
荒くなる呼吸。
やがてはハッキリとした痛みへと変わっていく。
『傷はそこまで深くないはずだ。
早く手当てをするといい。』
男は沖田にとどめを刺す事なく、背を向けた。
『情けをかけるのか?』
『情けだと?
勘違いをするな。
お前など、俺が殺さなくてもいつか桔梗が殺すだろう。
いや、殺し合うと言った方が正しいか。』
男は独り言のように呟き、闇に漂う霧に包まれ消えた。
残された沖田は
ぼやける視界の中、刀を鞘に収め、そのまま意識を手放したのだった。