浅葱色が愛した嘘
『美しくなったな、桔梗。
見違える程に……
だが、その魂は醜くなった。
無残な程に………』
どこからともなく聞こえる男の声。
しかし気配など感じられない。
周りを警戒し、妖刀を鞘から抜いた。
『やっぱり。
あの時の遊女はお前だったか。』
……!?!?!?
声は突然、真後ろから聞こえてきた。
そこ居たのは…
『高杉…晋作……。』
八年前、桂と共に仲間を殺し、
偶然にも島原で再会した男。
『驚いたよ。
まさか、新撰組の隊士となっていたなんてな。』
高杉はケラケラと笑い銀色に光る鋭い視線を桔梗に向けた。
『お前が……総司を斬ったのか?』
この男ならやりかねない。
これ程までに気配を消す事ができ、
幼い頃ではあったが、妖の桔梗は勝てなかった実力の持ち主。
こいつはあの二人だけではなく、
総司まで殺そうとしたという事か___。
なぜ、こんなにも私の大切なもの奪う?
ほれほどまでにこの力が欲しいか。
しかし、高杉は何も知らないと言った様子で首をかしげた。
『総司だぁ?
そいつぁ、一番隊の隊長さんだろ?
俺は新撰組に出向くなんざ、そんなめんどくせぇ事しねぇよ。
無論、桂さんもだ。』
嘘を言っているようには見えなかった。
だったら誰が?
他に高杉と桂以外に誰がいるというのだ?